香りを添える「ユズ」
香りのいいユズ。栽培には時間がかかります。
「桃栗3年、柿8年」は皆さんご存じでしょう。では、その続きを知っていますか。ちょっと下品な表現ですが、「ユズの大馬鹿18年」というのだそうです。植えただけでは実が成るのにそれほど長い時間かかるという意味ですが、実際は接ぎ木をしたり、枝を強く曲げる誘引などによって開花や結実を早くすることができます。ユズは柑橘類ですから、暖かい地方の果実というイメージがあります。実際、高知県馬路(まじ)村では農協が中心になってユズ製品で町おこしに取り組んでおり、「ぽん酢しょうゆ」は全国的に有名。しかし、実は福島県でも栽培されている樹木なのです。
農家の庭先にあるユズ。東北でも温暖な地域で実ります。
ユズ生産地として有名なのは浜通りの楢葉町。また、山間部の矢祭町でも25年ほど前にコンニャクからユズ生産に転換し、急斜面にユズ畑が広がっています。四国産よりも肌がきめ細かいのが特徴だとか。標高の低い地域では、たまに農家の庭先でもユズの木を見かけます。写真で紹介したのは飯舘村真野地区の農家で見つけたもので、黄色い果実がたわわに実っていました。ユズは寒冷に耐える性質があるため、東日本でも自生できる数少ない柑橘類なのです。といっても、どこでも成るわけではないので、山奥の農家が見かけると「温いんだべなあ」と感じるようです。もともとは中国が原産で、枝には鋭いトゲがあります。葉は幅広く、果実の表面に凹凸が目立ちます。
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よく見るとたわわに実っています。 |
楢葉町は加工品の開発にも熱心で、「ゆずポン酢」「柚子七味」などのオリジナル商品を送り出しています。「道の駅ならは・物産館」に数多くの商品があるので、店先で眺めてみてください。秋から冬は生のユズも手に入ります。果汁をハチミツと水で割ってレモネードのような飲み物にしたり、焼酎やチューハイに入れてもさっぱりとした味覚が楽しめます。料理に使うときは汁を搾ったり、皮を薄くむいて香りを添えたりしまずが、あまり使いすぎないのがコツ。ユズ湯も冬の風物詩です。湯船に浮かべるだけで身も心も癒してくれます。これも「みちのくの樹木」の1つなのです。
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種類が多い楢葉町のユズ加工品(物産館にて)。 |
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