餅の材料にもなる「トチノキ」
飯舘村の「木戸木の栃」。トチノキの巨木です。
飯舘村北部の真野ダムへ向かう幹線沿いに、村指定の天然記念物「木戸木の栃」があります。トチノキの巨木で、樹齢は推定400年、樹高は25m、周囲は5.5m。お隣の栃木県の県木がトチノキですから、福島県にもかつてはこのような巨木がいっぱいあったのでしょう。しかし、戦後の拡大造林政策などで少なくなりました。「木戸木の栃」はその威容を伝える貴重な樹木といえます。
高さ25mで、全容はカメラに収まりません。
飯舘村でも沢沿いに生えていますが、トチノキは水気を好みます。それも人間の目に触れにくい理由の1つで、谷間では低い標高で出現することもあります。葉が大きく、手のような形をしています。北海道から九州まで幅広く分布する落葉高木ですが、おもに冷温帯域の山地で生育。6月頃に白い花を咲かせます。巨木になるものが多いので、昔はくりぬいて臼に加工されたり、家具の材料として使われました。ヨーロッパのマロニエはセイヨウトチノキで、同じ仲間です。都会では街路樹としても使われています。
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地面に落ちた栃の実。昔は貴重な食糧源でした。 |
さて、トチノキは人間の食生活とも深い関わりがあります。大きな栃の実は、縄文時代から食用に使用されていたのです。といっても、そのままでは苦くて食べられません。非水溶性のサポニンなどが含まれているためで、水にさらすだけでなく、木灰でアルカリ中和する必要があります。かなり手間のかかる作業ですが、昔の人はその技術を持っていたのですから、その知恵には敬服するばかり。栃の実は栗のとんがりをなくしたような形をしており、熟すと厚い果皮が割れて種子を落とします。昔の山村は米がなかなか収穫できなかったので、アワやヒエなどとともに重要な食糧源になりました。いまでも栃餅は土産物屋でたまに見かけますが、渋抜きした粉を餅米と一緒に蒸し、餅つき器などでついて作ります。先人の知恵もかみしめながら味わいたいものです。
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お土産のとち餅。会津の磐梯熱海のホテルで見つけました。 |
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