見て可愛い・食べて美味しい「クリ」
栽培中のクリ。木全体にいがが成ります。
収穫の秋を感じさせる樹木といえば、やはりクリでしょう。5〜6月頃に花が咲き、夏になると黄緑の丸いいがが枝を彩ります。いまのシーズンは実が成熟し、いがが割れて茶色の実が現れます。ちなみに、クリを英語でマロンといいますが、本当はトチノキ科のマロニエの実のことで、クリの実ではありません。クリはブナ科クリ属の落葉高木で、樹形は丸みを帯びています。樹皮も独特で、若いときは灰色ですべすべしています。大きくなると縦に割れ目が入りますが、他の落葉樹に比べてゴツゴツした印象はありません。材は堅くて腐りにくく、建物の柱や土台としては高級品。「うちの土台はクリ材」というのは自慢話になるほどです。昔は鉄道の枕木、家具材としても使われました。
縦に裂け目が入るクリの樹皮。材は建築材として使われます。
クリは−20度を超えない地方なら、どこでも栽培が可能。北海道の一部を除き、全国どこでも生育しています。それどころか原産地は広く、アジア、北アメリカ、ヨーロッパでも分布しています。世界中にあるインターナショナルな樹木といえるかもしれません。日本にあるクリはニホングリといいますが、それだけでも200種類以上あります。山に自生しているクリは、シバグリまたはヤマグリと呼ばれます。栽培されているのはシバグリを改良したもので、大きな実が特徴です。とくに丹波グリが有名ですが、大きなものは掌に3〜4個くらいしか載りません。
|
秋になるといがが割れて、クリの実が姿を現します。 |
料理の定番はクリご飯。水に浸した米にクリを入れ、砂糖、塩、醤油、酒を加えて炊き込むだけです。甘党ならばクリキントン、羊羹にしても美味しくいただけます。有名なのは西日本の丹波地方や岡山県などですが、東日本では茨城県がおもな生産地になっています。福島の直売所でも、秋になるとクリの実が並びます。阿武隈山系でよく見かけるヤマグリは実が小さく、山の動物たちにとっては貴重な食料。しかし、人間は食べるのに苦労します。クリはドングリと違ってタンニンの含有量が低く、食料としてはうってつけなのですが、残念ながら渋皮にタンニンが含まれているからです。これを取り除くには、熱湯に入れて熱いうちにむくか、水に一昼夜つけてからむくなどの工夫が必要です。手間はかかりますが、ヤマグリは甘みが強く、渋皮をむいて生でかじってもわかるほど。せっかくの秋の味覚ですから、ぜひ堪能したいものです。
|
山でキノコやクリの実が穫れるのも秋の楽しみ。 |
|