東北でよく育つ「クロマツ」
亀甲状の大きな裂け目が特徴のクロマツ。堂々としています
これから海水浴シーズンを迎えますが、海岸沿いでよく見かける樹木が「クロマツ」。高さ30m以上にもなる常緑高木です。その特徴は何といっても灰黒色の樹皮で、亀甲状の大きな裂け目が見えます。枝振りも太く、その勇姿は日本画のテーマとして昔から描かれてきました。クロマツは別名「雄松」と表現され、「雌松」のアカマツと区別されます。なぜ海岸付近に多いかといえば、クロマツは葉の量が多いので根まで栄養が回らず、水分条件の悪い場所では育ちにくいから。山の痩地で育つアカマツとは対照的です。もっとも、潮風に強いという性質もあるので、雪国では人工的に植林されたものが少なくないようです。
海岸線では風になびくような形になります
クロマツは北海道を除く全国各地に分布しており、お隣の韓国の海岸線にも自生しています。とくに東北ではよく育つ樹木です。海沿いでは幹が風下側に傾き、枝も風になびくような形になります。いかに海風が強いか、その形で実感できます。葉は二葉で、針のような鋭い葉が2本ずつ出ています。その点はアカマツと同じですが、やや硬いようです。葉の中で育つマツカサには種子があり、カサを開いてこぼれていきます。用途としては建築材、パルプ材にもなりますが、庭木や盆栽など園芸として用いられることが多い樹木です。
|
針のような葉が2本ずつ生えています |
このクロマツも幹だけが残って白骨林になったところがあります。そう、松枯れ病です。その原因は終戦直後にアメリカから帰化したマツノザイセンチュウという長さ数ミリの動物で、当時に徹底的な駆除が行われました。しかし、燃料が石油に代わってから被害木が放置され、全国に波及していきます。現在、その被害がもっとも及んでいるのが東北です。マツノザイセンチュウが松の木に取り付くと、急速に木が枯れてきます。そして次の松に移るためマツノマダラカミキリを利用します。これは夜行性の昆虫で、枯れた松の木に産卵し、羽化するときにマツノザイセンチュウが乗り移るのだとか。もちろん、行政も手をこまねいているわけではなく、薬剤も空中散布などを行っています。人体への影響はほとんどないようですが、双葉町で見つけた看板には「散布後3週間は林内からの山菜または家畜飼料等の採取はご遠慮願います」という文字が見えました。
|
農薬散布を知らせる看板。その時期は林に入らないことです |
|