香り抜群の使える樹木「山椒」
庭先でよく見かける山椒。その香りが魅力です。
「山椒は小粒でもピリリと辛い」という諺があります。ちょっとだけでもすごく辛いという意味が転じて、小柄でも頭がきれる人を指します。そのくらい存在感があるということでしょう。田舎料理でよく使われるのは葉の部分で、木の芽ともいいます。全体は10cmほどで、対の小葉が生えています。枝には鋭いトゲも対生しています。よく似た犬山椒は香りがなくトゲが互い違いに生えるので、容易に区別が付きます。緑色が鮮やかな若葉は手の平で軽く叩くと香りが増し、冷や奴や刺身のつま、お吸い物の香り付けなどに使われるほか、懐石料理の彩りにもなります。佃煮も簡単。若葉を大鍋で数分煮て、冷水に数時間さらしてアクを抜き、鍋に移して水を加え、しょう油・酒・砂糖を加えて弱火で1時間ほど煮詰めるだけ。瓶詰めすると、長期保存も可能です。
料理に重宝するのは春先の若葉。いわゆる木の芽です。
山椒はミカン科さんしょう属の落葉低木で、日本では昔から山野に自生していました。縄文土器に付着した山椒の種も発見されており、東アジアで広く分布しているようです。栽培されるようになったのは明治以降で、いまは農家の庭先などで見かけます。家訓で栽培を禁止している農家もあるようです。古名は「はじかみ」といい、食べると辛くて顔をしかめるところからきています。中国から生姜が入ってきてからは、山椒を和のはじかみ、生姜を呉のはじかみと表現しています。使えるのは葉だけではなく、花や実も重宝します。花山椒は春先に咲く小さな黄色い花で、料理の吸い口や佃煮など使われます。実山椒は青山椒ともいいますが、強い香りと辛みが特徴。シラスとともに佃煮にするちりめん山椒が有名です。その実も秋になると皮が割れ、黒い種子が現れます。食用にするのは皮の部分で、その粉をウナギの蒲焼きにかけていただきます。
|
秋になって赤くなった実。粉山椒の材料です。 |
おもな産地は西日本ですが、ここ福島でもあちこちで栽培されており、いろんな料理に使われます。葉や実だけでなく、木や枝は硬いので、すりこぎにもなります。まさに1本あると楽しい田舎の樹木といえるでしょう。
|
ゴツゴツした樹皮。細いものはすりこぎになります。 |
|