東北でよく育つ「イチョウ」
巨木になりやすいイチョウ。春の風景も悪くありません
都市の街路樹としても見かけるイチョウですが、田舎に多い落葉高木です。巨木になりやすく、高さ10mを超えるようなものもあります。ゆえに樹齢2000年などと表示するところもありますが、実は平安時代に原産地の中国から輸入され、室町時代に日本各地で植えられました。なので、1000年がいいところでしょう。巨木は東北に多く、とりわけ青森に目立つとか。冷涼な気象に合った植物といえそうです。その実はもちろん銀杏ですが、雌木のみに成ります。そう、イチョウは雌雄異株なのです。銀杏は食用で、茶碗蒸しの具になったり、串焼きなどで人気があります。ただ、銀杏が成る雌木は巨木が少なく、ほとんどは雄木。人間と反対ですが、銀杏に養分を取られるためかもしれません。
秋になると葉を落とし、地面は黄金色になります
銀杏に含まれるギンコール酸は皮膚炎を誘発するので要注意。銀杏も食べ過ぎるとけいれんを引き起こす恐れがあり、子どもに食べさせない、大人も毎日は食べない、といった配慮は必要です。
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これが頭の巣のイチョウ。突起物が乳房に似ているといわれます |
イチョウの美しい季節は、やはり黄色い落ち葉が絨毯のように広がる秋でしょう。でも、春先の新緑の季節も美しいものです。さて、今回の写真で登場したイチョウですが、都路の頭の巣(つぼりのす)という地域にあります。別名・乳イチョウともいわれますが、枝から垂れ下がった突起が特徴的で、たいへん珍しいものです。実はこの木には言い伝えがあり、「隣家の高橋末吉の祖・栄蔵が南部藩に粗鉄を仕入れにいった際に記念に買ってきて植えたもの」と村史にあります。いまから約200年前の話で、ここでは当時、製鉄が盛んで、南部藩とは船で交流していたようです。その名残はもうありませんが、唯一、このイチョウが岩手との結びつきを物語っているのです。
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