クリスマスツリーにもなる大木「もみの木」
ひときわ天高く伸びるもみの木。まさに巨木です。
雑木林の多い阿武隈山系でも、目を凝らすと突出して天高く枝を伸ばす樹木が見つかるはず。それがもみの木です。日本の代表的な針葉樹の巨木で、高さ25〜45mくらい、直径は50cm以上にも達します。幼木はクリスマスツリーに使われますが、厳密にはヨーロッパもみを用いるのが正しいようです。日本では東北から屋久島にかけての太平洋側に多く、耐寒性よりも耐暑性に優れています。山本周五郎の「樅の木は残った」は伊達騒動の中心人物・原田甲斐が仙台から江戸の寺に移植したもみを伊達家の象徴として描いたものですが、実際は福島以南に多く、北の樹木というわけでもありません。
3本指を出したような枝先。全体的にはこんもりとした形です。
樹木は真っ直ぐ伸び、先端は円錐形。枝は人間の指のように広げます。樹皮は暗灰色で、老木はケヤキのように鱗状に割れて剥がれやすくなります。酸性土壌や乾性土壌でも生育するため、最初は広葉樹やアカマツの下木となりますが、やがて陽光をしっかりと吸収して大きく育ちます。ただ、酸性雨に弱いという報告もあり、都市部に近い山村では衰退する傾向にあります。阿武隈山系に残っているということは、それだけ公害の影響を受けていない証拠でもあるのです。
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墓の裏に立てる塔婆ももみの木。仏教の宇宙観を表す宝珠・半円・三角・円・方、戒名、裏面には「バン」というサンスクリット文字と起塔日、施主名が書かれています。 |
風格の漂うもみの木は、植林でなく自然に萌芽したものがほとんど。林業家は孤立した大木を山の神として祀ってきました。洋の東西を問わず神聖な木とされています。西洋でクリスマスツリー、日本で結納台、棺桶や墓地の卒塔婆などに使われるのはそのため。また、加工が容易な半面、変形しやすいという理由もあるようです。あるときは天然木として、あるときは加工品として、私たちの暮らしに深く係わっている樹木なのです。
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