No.7
2002年2月21日
物件以外にかかるプラスαの費用
裏口に差した「鬼やらい」。ヒイラギの葉を差す家もある
都路村では2月の節分、農家の門口や土蔵、湯殿の入口などに、豆柄の枝の先に鰯の頭をつけたものを差します。これを「鬼やらい」と言いますが、頭についている目で鬼をにらみつけ、追い払うとされています。その夜は夕食に使った鍋を洗わずに、そこで豆を煎ります。豆まきは長男の仕事で、まずは神棚で「伊勢の皇太神宮様にあげます。歳神様にあげます。八百万の神様にあげます」とまいてから、「福は内、鬼は外」と叫びながら敷地内を回ります。各家で家内安全を祈願することで、農村の平和は守られていくのです。
100年以上使っている古い一升マスを持ち歩いて豆まき
農村はよく「家意識が強い」と言われます。阿武隈山系にも豪族の末裔はいますが、住民の多くは近世になって炭焼きなどを目的に移り住んだ者の子孫。家や地域のしがらみは、古い農村に比べて強くはないようです。それでも家の建て替えとなれば50、60坪の建物はざらで、大黒柱も8寸から尺(約24〜30cm)角程度のものを使います。家は一家のシンボルであり、子孫繁栄に欠かせないものだからです。
その点、都会の人たちは合理的です。近年は「夫婦2人だから18坪くらいの小さな家で良い」と話す人も増えてきました。低予算の人はそれも1つの暮らし方でしょう。ただ、困るのはあまりに非現実的な要望。「民宿をやるのに1000万円しか予算がないので、40坪以上で800万円くらいの売家はないか」「300万円の貯金がある。とにかく安くて広い土地がほしいので、1町歩以上の土地を案内して」という人もいます。
山林や田畑などに家を建てるには平盤を造る造成工事が必要
田舎物件の魅力は価格の安さです。現況有姿販売が多いのもそうなる理由の1つで、たいていの売地は造成費、売家は補修費が別途にかかります。都会の人はよく登記費用や固定資産税を気にしますが、通常は数万円から数十万円のレベル。造成費や補修費は百万円単位になるのが普通です。その費用を甘く見積もっている人が少なくないのです。
低価格で完璧な物件など、どこにも存在しません。この地域では定住用物件で最低800万円台から取得可能ですが、移住者の総予算の平均は1800万円前後。ある程度の広さと快適さを求めると、こういう数字になります。肝心なのは、物件データだけで判断せずに現物をよく見ること、+αの費用を見込んでおくこと、なのです。次回は造成費については、もう少し具体的にご説明します。(Y)
次回は「土地代が0円でも建築前にこれだけかかる」というお話
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