虎捕山の麓にある山津見神社。古い歴史を持っています。
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飯舘村の北の外れにある山津見神社。その境内に入ると、狛犬ではなく一対の白狼の像が拝殿前に現れます。白狼は山の神の使いで、昔は御眷属(ごけんぞく)様と呼ばれていたとか。それだけ尊ばれたのは白狼に火盗災難を除く力があるからで、夜中にうなり声をあげて火災を消したり、お札を貼って盗賊を捕らえた話などが言い伝えられているそうです。拝殿の天井には231枚の画があり、そのすべてに狼が描かれています。新築されたのが明治37年で、狼信仰と日露戦争の戦勝祈願が結びついたのかもしれません。狼だけの画というのも壮観な眺めです。
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神の使いとして奉納されている白狼。
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神社の創立は1051年。平安時代に遡る古い神社で、東北地方の山の神の総本山的存在です。昭和29年に改築され、現在は山の中でひっそりとしています。神社の由来もユニーク。この山中に橘墨虎という凶賊が住み着き、悪事の限りを尽くしていました。それを聞いた源頼義公が部下に命じて墨虎を捕らえようとしますが見つからず、あるとき山の神から「墨虎を獲んと欲すれば白狼のあしあとをふみ追うべし」というお告げをいただきます。それを追って山の中に入ると、岩の中に潜んでいた墨虎を討伐することができた、というもの。頼義公は山の神に威徳を感じ、山頂に祠を建てて虎捕神社と讃えました。墨虎を捕らえたことから山の名を虎捕山と呼び、墨虎を刀で刺したことから地名が佐須になったといわれています。
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拝殿に描かれている狼の天井画も一見の価値ありです。 |
昔の山の民は林業で山に入ったり、鉱山で危険な仕事をしたり、山を越えて旅をしたりしました。山の神を祀る神社を訪ねて、仕事や旅の安全を祈願したことはいうまでもありません。いまでは移動手段が車に代わりましたが、この神社では家内安全、商売繁盛などとともに、交通安全を祈る車のお祓いも受けつけています。 |
車のお祓いを受ける場所も設けられています。
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ところで、先ほど「山頂に祠」と書きましたが、案内紙によると拝殿から山頂までは650m・徒歩で約25分。そのくらいならと気軽に山道を歩いてみました。ところが、最後の100mくらいから急坂となり、岩場に鉄梯子や鎖が下がる難所続き。とてもハイキング気分では登れません。それなりの靴と服装を持参した方がベターです。山頂付近からは太平洋にかけて素晴らしい眺めが広がっています。ぜひチャレンジしてください。 |
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険しい山道を辿って山頂へ。最後の100mは難所です。 |
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