【第5回】
「してくんしぇ」「ゴタゴタ」「なんでかんで」
人に頼むときに使う「してくんしぇ」、そう「してください」の方言です。親しい間柄では「してくれたらいいばい」という表現も使いますが、こちらの方がていねいな感じで、年輩の人がよく使います。この反対語は「しないでくんしぇ」となります。
さて、次に「ゴタゴタ」です。標準語でも「ゴタゴタ言うな」とか「ゴタゴタに巻き込まれる」といった使い方をしますが、ここでは大雨のあとなどの土の状態を指す言葉として使われます。「べたべた」に近いのですが、同じ粘着質でもより困った災いというニュアンスです。語源を調べたら、「1260年に中国から臨済宗の僧が来日した。彼は北条時頼の依頼で建長寺の責任者になったが、時頼が死んで1年ほどすると突然帰国してしまった。その僧の名前は兀庵(ごつたん)。そこからゴタゴタという言葉ができた」とか。その人の帰国でよほど混乱したのでしょう。
「なんでかんで」も地元ではよく聞くフレーズです。やはり困りごとに関係してきますが、それでもやらなければならない、つまり「何が何でも」「どうしても」というような意味です。しっかり自己主張するとき、相手にやや強く言うときに使う言葉です。
以上を踏まえて、会話してみましょう。
「お父ちゃん、水の出が悪いから、稲刈り終わったら山さ見に行ってくんしぇ」
「稲刈り? まだ田んぼゴタゴタで機械なんかへんねえぞ」
「でも、明後日は結婚式だし、上棟式もあるべえ。なんでかんでその前にやっちまわねえと・・・・」
「んだなあ。芽が出てきてもうまくねえし。今日は1反歩だけでも手刈りすっかあ」
こりゃあ隣の田んぼはゴタゴタだあ!
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