【第11回】平山健治さん、
美恵子さんご夫妻の「除雪機」
---雪が降らなきゃ何の役にも立たない道具---
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今年は雪が降らないから、この道具も出番なし。撮影もできないので、写真は平山家から借用した。
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さて、いよいよ真打ちの登場である。本当は去年の夏に出てもらう予定だったが、主役のポニー2頭を誰かにあげてしまったという。やむなく除雪機に切り換えたら、「今年は雪が降らないから無用の長物」と健治さん。ポニーも餌を食うばかりで役に立っている様子はなかったが、除雪機だってこれほど雪が少なければ出番なし。でも、また1年先延ばしというのも悔しいので、11回目はもっとも親しい移住者仲間に登場してもらう。
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左がタロ、右がトラ吉。平山家の家族だ。
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平山家は集落の幹線道路から約600m入った突き当たりにある。深さ30cmの雪が降れば×幅3mで540立方m、50cmなら900立方mという雪の量。学校の25mプールの体積が390立方mくらいなので、前者でプール約1.4杯分、後者で約2.3杯分という計算になる。猫のトラ吉も犬のタロ<与太郎から改名?>も手伝ってくれないから、さすがに夫婦2人でこの量はつらい。20年ぶりの厳冬でありながら小雪の今冬と違って、昨冬は何度かドカ雪に見舞われた。味噌作りを誘っても、酒飲むぞーと声をかけても、いつもならある夫妻の顔が見えない。そう、二人は必死で雪と格闘していたのだ。それに懲りた健治さんは、新たな対抗手段を考える。パソコンの前に座り、得意のネットオークションで除雪機を落札。もちろん中古だが、価格はたったの3万5000円というから、目利きのよさは天下一品だ。
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都路の移住者ではネット活用の先駆者である健治さん。
HPを立ち上げるとともに、オークションも最大限に利用してきた。 |
「近くにホンダの新品を買った移住者もいるけど、何と40万円だって。普通は中古だって15万円くらいするけど、たまたま北海道の小さな工場で生産した安物が見つかったんだ。仕掛けは簡単。ローダーで雪を巻き込んで飛ばすだけ。7馬力だけど、石まで飛ばすくらいのパワーがある。楽だし、レバーを倒すだけなので女性でも大丈夫だよ」
ただし、進むとき左右のキャタピラが同時に動くので、方向を変えるのが一苦労。ガソリンも食うので、ペットボトルで持ち運びながらの作業になる。それでも会津みたいに雪が多ければ強力な武器になるはずだが、阿武隈山系では降ってもせいぜい40cm前後。購入後に使ったのは去年1回だけというから(いちばん上の写真がそれ)、ちょっともったいない気もする。イベントでそうめんを飛ばしたり、夏の水撒きに使う改造はできないものか・・・(笑)。
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奥がセルフビルド中のゲストハウス。手前は現在の住まいとミキサー車。
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しかし、この無駄こそ平山家の真骨頂である。敷地は3町歩と広いが、そこにあるのは車と機械ばっかり。ざっと挙げると、寝泊まりしているキャンピングカー、ミキサー車、ユニック、クレーン車、運搬車、ユンボ、トラクター、ダンプ・・・・本業は中古車販売だが、商売に関係ないものばかりだ。 |
これを農作業の道具と見るか、機械の墓場と見るかは、皆さんの自由である。
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ちなみに運搬車はポニーの餌を運ぶため3万円で落札し、岐阜まで取りにいった。「いまはポニーがいないから堆肥運びに使う」というけれど、耕した畑は120坪くらい。まだ一輪車で充分な広さである。でも、その無駄のお陰で助けられている仲間は多い。あの車ない? あの道具ない? と聞けば、たいてい「あるよー」。大きな道具だけでない。敷地内にある廃屋には、荷物がいっぱい詰まっている。パソコンのルータない? 講演用のプロジェクターない? と私もよく相談するのだが、決まって「あるから持ってくよー」という答えが返ってくる。ドラエモンのポケットみたいな人なのだ。 |
無駄といえば、去年10月に健治さんと660kmも離れた岐阜県大垣市へ出かけた。詳しくは私のHP(http://www.geocities.jp/miyakozi81/)の「田舎雑記」(10月9日)に書いたが、『「奥の細道」を歩く』という企画で都路に立ち寄った日経新聞・土田さんのゴールインをHPのネタ集めのため見にいこうという主旨。そこで付けたタイトルが、私も平山さんのHP(http://www.rofuu.com/)も「おバカの旅」。
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その結びで「平山さんの、缶コーヒーはジョージア『エメラルドマウンテンブレンド』だけ、昼飯は行きも帰りも米山SAの『米山定食』、そして喫茶『むすび』ではモーニングをお代わりという遊び心のなさもよくわかった」と書いたら、向こうは「食事のたびに何を食べるか迷い、缶飲料でさえ迷うフリーライター君とバカな話を飽きずに続けた3日間の旅」と返してきた。しかし、妻の美恵子さんによれば、北海道旅行でもすべてカツ丼で通し、「カツ丼にも味の違いがある」と言い張ったらしい。さすがは針小棒大に大騒ぎする団塊の世代である。 |
なぜかユニットバスが5台もある。定価なら1台40万円だが、ネットで3万円だったとか。
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真面目に会話していても、気がつけば「景気づけにケーキを食おう」とか「亀は歯がないからかめへん」と駄洒落を連発。大垣では現代の俳人が感動的なゴールインをしたのに「私もハイジンなんです。人生の廃人」と発言し、土田夫人を唖然とさせた。 |
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こんなパイプハウスもひょひょいとつくる。本当はすごい人だ。 |
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でも、本当は平山さんくらい尊敬に値する人はいない。「田舎暮らしの本」4月号にも書いたが、健治さんは20代で35坪の住宅を在来工法で自ら建築。40坪の店や5坪の事務所も自分でつくった。都路では現在、24坪のゲストハウスをツーバイフォーで建築しており、そのあと40坪のフルログも建てる予定(なかなか着工しないので、部材が変形して薪になるという噂も)。セルフビルドは珍しくないが、文系でここまでやった人はいないだろう。
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敷地内は大型車だらけ。ビニールシートの中にあるフルログの着工はいつになるのか?
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しかも、僧侶らしく(少林寺拳法で僧籍を持っている)モノに固執せず、「土地は現世で借りただけ」と農地を買っても移住するまでの7年間は仮登記すらしなかった。このケースはほかにない。美恵子さんに至っては「どうせうちは子どもがいないから、土地はいつか山本さんの娘にあげようかなあ」などとおっしゃる。まさに天使のような女性だ! |
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「人生、無駄がないと楽しくないべえ」と健治さん。なぜか日経新聞を愛読している。 |
今回の道具拝見はちょっとくだけたけれど、平山夫妻こそ都路の地域おこしになくてはならぬメンバー。都路林産開発の吉田社長はじめ、仲間はみんな頼りにしている。今後ともよろしく!
※「田舎暮らしの本」4月号(3月3日発売)で、山本一典氏が「田舎暮らしを成功させる20カ条」という12ページの特集を書いています。平山さんなど阿武隈山系の6組の移住者が登場。ぜひお買い求めください。 |
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