【第5回】熊本一介さん・美彌子さんご夫妻さんの「ビニールハウス」
---冬から春に大活躍する菜園用の温かな空間---
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育苗にも威力を発揮するビニールハウス。熊本家では大活躍です
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鎌倉岳の麓にある熊本家の敷地には、3×2間のビニールハウスが建っている。親切に説明すると6坪=12畳で、ちょうど山本家の居間と同じ大きさだ。敷地は9反=2700坪なので、わずか450分の1の占有面積である。しかし、この道具が大きな威力を発揮する。 |
ハウス内では地面が凍らないので、冬でも野菜を育てられる。ミズナやミブナ(京野菜の一種)などを栽培したが、この冬はほとんど青物を買わずに済んだというから立派! そして現在、ハウスの中には3坪弱の大きな木箱がある。その中に育苗トレーをびっしりと並べ、まわりをワラと落ち葉で囲って保温性を高めている。ワラはご近所の田んぼを手伝った報酬として、米とともにいただいたもの。ふわふわの落ち葉は、ハウスの地面にも絨毯のように敷きつめている。 |
種を植えたのが3月15日。約1カ月で苗を育てます
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育てている苗は18種類。長茄子・賀茂茄子・千両2号(これも茄子の品種)、キュウリ、ミニトマト、高台寺(シシトウの一種)、完熟トマト、なつのこま(クッキング用トマト)、鷹の爪などである。 |
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「市販の苗だとどこからきた作物なのか素性がよくわからないので、栽培しても面白くないんです。やっぱり最初からやりたい。種は『タキイ種苗』と『大和農園』のカタログを取り寄せて選んでいます。3年前にネズミにやられたときだけは、泣く泣く苗を買いましたけどね(笑)。ハウスは温かいからネズミにとっても居心地がいいみたいで、苗を食べるというよりいたずらしていたんでしょう」と一介さんは話す。
ハウスでは何度も、カタカタカターという音が間欠的にする。何ですかと聞いたら、地面の青い装置を指さし「ネズミ除けです」という。ほほー、こういう製品があるとは知らなかった。音より震動を地面に伝える仕掛けで、効果は抜群。ネズミにとっては居心地の悪い場所になってしまった。 |
これがネズミ除け。船引の農業資材店で売っているそうです
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木箱の中とハウスの内部に、計2台の温度計も見える。1台3000円ちょっとする「最高最低温度計」という商品で、その日の最低温度と最高温度、つまり日較差が測定できる。来年は野外にも設置して、計3台にする予定とか。一介さんは毎日、育苗箱の最高温度と最低温度、ハウスの最高温度と最低温度をノートに記録。データを蓄積している。現役時代は石油会社の研究所に勤めていただけあって、実にまめである。 |
最高最低温度計とノートの記録。この情熱はすごいです! |
ちなみに、3月22日は「39度・2度・41度・−7度」と出た。ハウスの中が−7度で育苗箱が2度というのはわかりやすいが、最高温度はハウス内(41度)よりも育苗室(39度)の方が低い。これは昼間に日焼けしないよう、育苗箱によしずを掛けているため。それ以外は保温性のいい中空フィルムで育苗箱を覆い、夕方の4時頃になったら冷気が入らないようフィルムを洗濯ばさみで止め、その上に布団を被せていく。その作業は優しさに満ちており、子どもを育てているような感じだ。 |
布団を掛けるのは夕方でも温かいうちに
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自作の野菜貯蔵箱。外からコンパネ→発泡スチロール→籾殻で、ネギやダイコン、生姜などを保存します |
苗は4月末にポットに仮植し、5月末になったら畑に定植する予定。ハウスを出て畑も案内してもらったのだが、管理機で耕耘したばかりの黒々とした畑が4カ所にあり、面積は合計で1反弱とか。もっと広く見えるが、「ちゃんと測りました」というからさすがに几帳面である。以前はもっと勾配のきつい土地だったが、すぐ近くで舗装工事が行われ、その残土を盛土してもらった。畑の土は地下に潜ってしまったが、今後のことも考えて使いやすさを優先したという。幸い、近くの農家から牛糞やワラ、落ち葉を分けてもらえるので、堆肥は作りやすい。土作りはやり直しだ。畑のまわりにはリンゴやブルーベリーなどの果樹が植えられ、キノコもシイタケ、ナメコ、マイタケと3種類を栽培。家を建てて約10年だが、さすがに自給レベルが高い。 |
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